「コミットメントと一貫性」の例10選 -『影響力の武器』を解説
YESを引き出すための5つテクニックが紹介されている『影響力の武器』という本をご存知でしょうか。
商品販売にもつながるテクニックとして、広告業界ではよく知られた一冊であり、メンタリストのDaiGoさんにも大きな影響を与えたみたいです。
5つのテクニックを1つずつ丁寧に噛み砕いてご説明していきます。感覚的にも理解できるよう、身近にある「コミットメントと一貫性のルール」も10個リストアップしてみました。
コミットメントと一貫性のルールとは?3つのポイント
ポイント1:一貫した人間でありたい
ほとんどの人は、ひとたび何か決定を下し立場を表明すると、その立場と一貫した行動をとりたいと思うようになります。この心理法則を「コミットメントと一貫性のルール」と言います。
このようなルールが成立する背景としては、一貫した人間ほど社会的に高く評価されやすいこと、また、一貫性を持つことで日々の煩わしい選択を自動化できることがあります。
しかし、この生きていく上で役立つルールも、承諾誘導のプロによって悪用されることがあるのです。
ポイント2:最初の一歩をいかに引き出すか
このルールを活用(悪用)するための最も重要なプロセスは、最初のコミットメント(立場の表明や参加)を引き出すことです。
たとえば、学生に対し環境保護についての作文コンクールを実施し、賞品を用意しておくと、学生は「エコバッグで買い物すべき」など望ましい主張をするようになります。
作文を書くというコミットメントを引き出した結果、その学生はたとえ賞品目的であったとしても、自分の主張した内容の通りに行動しやすくなります。
この最初のコミットメントは、より手間のかかる行動を伴い、周りから知られており、自発的に行った(と信じられる)ものほど、より強力な一貫性を引き起こします。
ポイント3:有名な応用例は2つ
『影響力の武器』の中で、このルールを応用したテクニックが2つ紹介されています。
1つ目が「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」で、最初に小さな要求でYESを引き出てから、次により大きな要求をするというものです。
本の中の例で言うと、家の庭に「安全運転をしよう」と書かれた看板を設置させてほしいと最初に要求したところ、大半の住民はそれを拒否しました。しかし、看板のお願いをする1週間前に、「安全運転をしよう」という内容のシールを貼ってほしいとお願いしOKをもらってから、看板のお願いをすると成功率が格段に高まったそうです。
2つ目の応用例が「ローボール・テクニック」で、これは悪い条件を隠した状態で購入・契約を決心させ、その後に徐々に悪条件を開示していくというセールステクニックです。
車のディーラーがお得な値段を提示し、購入を決断させてから、徐々に手数料や保険料を加算していき、平均的〜割高になるまで値段を引き上げるような手法がそれにあたります。
身近な「コミットメントと一貫性のルール」の例10選
『影響力の武器』は海外の文献のため、事例にあまりピンと来ないこともあります。
そこで、現代日本で見られるコミットメントと一貫性のルールを挙げていきます。
1:ディアゴスティーニ
ディアゴスティーニとは、プラモデルのパーツ等が付録になっており、毎月買い続けると完成させられる雑誌です。
定価は1800円ですが、創刊号だけは500円くらいと格安になっており、最初のコミットメントを引き出し、定期購読に引き込む戦略が見えます。
2:「せっかく買ったから」と面白くない本を読む
本に限らず、「せっかく買ったから」いいものだと信じたいという、自己正当化のバイアスがかかることはよくあります。
販売者の視点でいうと、一度買ってもらえば、相手は満足するように自己正当化してくれるのです。
3:要件より先に「空いてる?」
A「明日、予定空いてる?」
B「空いてるよ」
A「引っ越し手伝ってほしいんだけど」
B「おお、わかった…」
のような形で、最初に「空いてる」と宣言させることで、その後の要求が断りづらくなります。
※これを使いすぎると多分嫌われます。
4:ポイントカードを作る
5分で作れるにしろ、わざわざ時間をかけて住所や電話番号を記入するという行為をすることで、
「わざわざポイントカード作ったし、あのお店にもう一回行こう」という心理にさせることができます。
5:フォロー&リツイート キャンペーン
よくYouTuberや企業アカウントのプレゼントキャンペーンなどで、応募条件をTwitterのフォロー&リツイートにする場合があります。
たとえプレゼント目的でフォローしたとしても、一貫性のルールが働き、ユーザーは意外とフォローし続けるものです。
6:Amazonの「この商品を買った人におすすめ」
関連商品を提案する「クロスセル」や、買ったものよりワンランク高い商品を提案する「アップセル」も、「コミットメントと一貫性のルール」を応用したものです。
Amazonは高精度なアルゴリズムに基づき、関連商品を提案してくるため、ついつい買ってしまった方も多いのではないでしょうか?
7:Apple Careや純正ケース
「クロスセル」の一種です。
iPhoneを買うとApple Careという修理保証サービスを提案されますが、iPhoneの本体価格に比べると微々たる費用ということもあり、加入する流れになりがちです。Appleの純正ケースのクロスセルも経験があります。
8:オープンキャンパス
足を運ぶというコミットメントを引き出すことで、「自分はその学校を志望している」という自己イメージができあがり、出願しやすくなります。
「交通費出します」という学校も多いですよね。
9:解約までの高いハードル
大手携帯キャリアなどでは、解約月を設けたり、ポイントが消滅したり、端末代の一括返済が必要になったりと、解約までのハードルを高くしています。
それにより、「解約するのが面倒」「そのままでも、そんなに値段が変わらないし、まあいいか」という人間の一貫性を引き出します。
10:朝礼でその日の目標を宣言する
激務で知られる証券会社の営業は、出社したら最初にとてつもなく高い営業目標を宣言させられると聞いたことがあります。
目標の宣言というコミットメントをすることで、「頑張らざるを得ない」状況が出来上がります。
まとめ
情報であふかえる現代社会において、本来このルールは、効率よく日々の選択をこなしていく上で役立ちます。
しかし、さまざまな形でトラップが仕掛けられることがあります。ぜひ、自問自答して立ち止まることの大切さも覚えておきましょう。
広告者の視点からいうと、いかに「最初のコミットメント」を勝ち取るかについて考え抜くべきです。