「好意」の例10選 -『影響力の武器』を解説
YESを引き出すための5つテクニックが紹介されている『影響力の武器』という本をご存知でしょうか。
商品販売にもつながるテクニックとして、広告業界ではよく知られた一冊であり、メンタリストのDaiGoさんにも大きな影響を与えたみたいです。
5つのテクニックを1つずつ丁寧に噛み砕いてご説明していきます。感覚的にも理解できるよう、身近にある「好意のルール」も10個リストアップしてみました。
好意のルールとは?3つのポイント
ポイント1:好きな人にはYESと言いやすい
非常にシンプルですが、人は自分が好意を感じている知人に対してYESと言う傾向があります。
著書の中ではタッパウェア・パーティーの「ホームパーティー商法」の例が挙げられていました。
どういう商法かと言うと、実際に商品のタッパーを使っている一般人(多くが主婦)が知人を招きパーティーを開き、そこでタッパーを売り込みます。
プロの販売員ではなく、いわば友だちが販売しているものですから、パーティー参加者は「好意のルール」が働き購入しやすくなるのです。
ポイント2:好意を抱かせるための要素
好意を得るとYESを引き出しやすくなるのはわかるとして、では人はどういう人に好意を抱くのでしょうか?
著書では主に3つ挙げられており、1つ目が「身体的魅力」です。人は外見がいい人に対して、才能や親切心、誠実さ、知性を持っていると自動的に考えてしまう傾向があると、多くの研究が示しています。しかもその多くが「無意識のうちに」でした。成果を出す営業担当に、美男美女が多い点は経験的にも納得できるのではないでしょうか。
2つ目が「類似性」で、人は自分に似ている人を好きになるということです。相手に取り入るためのテクニックとしては、相手との共通の趣味や経歴を見つけ出し、強調するというものがあります。
3つ目は「接触頻度の多い人」です。恋愛テクニックでも「単純接触効果」はよく挙げられるものです。恋愛以外でも、たとえば選挙のときには、ただ名前を聞いたことがあるだけで好感を持ち、票を投じる人も多くいます。
ポイント3:広告の伝統的手法「連合」
古代ペルシャの勅使(戦争の勝敗を伝える人)は、勝利を伝える場合、豪華にもてなされ、一方で敗北を伝える場合、その場で処刑されてしまいます。勅使自身には勝敗の責任はないにも関わらず、事柄の良し悪しと関連づけて扱われます。
こういった無関係な事物を結びつける人間の心理作用を「連合」と言います。
現代の広告でも「連合」は多用されおり、新車のお披露目では美人モデルを隣に立たせることで、新車のデザイン性や性能が優れているように見せることができます。スポーツブランドが有名選手に商品を使用してもらうブランディング手法も「連合」を活用したものです。
身近な「好意のルール」の例10選
『影響力の武器』は海外の文献のため、事例にあまりピンと来ないこともあります。
そこで、現代日本で見られる好意のルールを挙げていきます。
1:スーツの人は信頼できる
身体的魅力と関連して、身だしなみは好意を持ってもらうための重要な要素となります。
カジュアル志向の現代であっても、スーツ姿のサラリーマンがいなくならないのは、「スーツ=信頼できる」と評価する人が多いからです。
2:出身地が同じだと親近感
好意は類似性のある相手に対して抱きやくなります。
その典型例が「出身地が同じ人に親しみを感じる」という心理でしょう。
3:学閥
学歴などの経歴の類似性も好意をもたらします。
その結果、同じ学校の出身者を採用や昇進などで優遇する「学閥」が生まれるのです。
4:お世辞
著書の中でも、お世辞は好意を持ってもらうための非常に有効な手段だと書かれています。
返報性のルールにより、自分を褒めてくれる人には好意を持つようになります。
身体的魅力と同様に、お世辞は無意識のうちに相手に好意を持たせることができます。
5:年賀状
伝説的な自動車セールスマンのジョー・ジラートは、毎月1万3000通人のお客さんの一人ひとりに挨拶状を送っていました。
年賀状などのメッセージカードは、単純接触効果と返報性のルールの両方が働き、好意を得やすくなります。
6:保険会社の営業
保険レディー・保険マンはお客さんの元に何度も訪問し、お金の悩みはもちろん、さまざまな悩みを聞き、好意を勝ち取っていきます。
形のない保険という商品では特に「誰と契約するか」が重要になってくるため、好意を持ってもらうことは重要な要素です。
7:選挙の名前連呼
接触の頻度が多いほど、その人に好意を抱きやすくなります。
政治家はそのことを知っているため、選挙カーでは政策よりも名前を叫びます。
8:テレビCM・YouTube広告
接触の頻度を増やし好意を得るためには、テレビCMはその王道的な手段となります。
消費者の行動には「知り、理解し、購入する」という流れがあり、「知る」フェイズを飛ばすことはできません。
ウェブ広告で言うと、YouTubeのTrueViewなど動画広告は「知る」きっかけを提供する手段です。
9:「あいつ、俺の友だち」(連合)
初対面の人であっても、もしその人が自分が尊敬している人の友だちであれば、好意を抱きやすくなります。こうした現象は、好意が別のものへと移動する「連合」の作用によるものです。
「あいつ、俺の友だち」という自慢は、友だちの好意を借りようとする意図が伴っています。
10:サッカークラブの熱狂的サポーター(連合)
サッカークラブのファンも連合の例です。
チームが強いと、その好ましいイメージと連合するためにファンが増え、チームが弱いと逆にファンが減ります。
まとめ
「好意を感じている知人に対してYESと言いやすい」という好意のルール、そして人が好意を抱くメカニズムについてもご紹介しました。
外見の良さやお世辞など、一般的には表面的とされるものであっても、好意を持ってもらう上では非常に重要な役割を果たしています。
広告のプロであれば、常に人間の本質を見据えておきましょう。